キッチンや浴室などの住宅設備は家電製品と同じく、長く使っているとキズや汚れが付き機能も劣化してくるため、定期的に買い替えリフォームされています。
便器も同様で、便器はおおよそ20年で交換されると言われています。20年に1回となるとトイレリフォームは人生でほぼ1回のイベントです。そのイベントを失敗しないように、機器の特徴や平均的なリフォーム費用などを紹介していきます。
トイレリフォームにかかる費用相場と内訳
ネットで紹介されているリフォーム事例によると、トイレリフォーム費用は20万円以下から100万円超まで幅があります。それぞれの価格帯でできるリフォーム事例を紹介します。
トイレリフォーム費用の内訳
トイレリフォームでは、便器の交換だけでなく収納付きトイレ用手洗い器の設置や清掃性向上のためのトイレパネル(床材)の設置など種々の選択メニューがあり、リフォームにかかる費用も部材の選定で価格が大きく変化します。もちろんそれに工事費用や諸経費なども加わります。
価格別でみるトイレリフォームの詳細と事例!
20万円未満
トイレに新たに温水洗浄便座や手すりを設置して快適性や使い勝手を高めるリフォーム工事や便器単体の交換は20万円未満の工事費で実現できます。
既存トイレへの温水洗浄便座設置工事
ウォシュレット | 80,000円 |
設置工事費 | 15,000円 |
合計 | 95,000円 |
※金額は税別表示
これはトイレブース内にコンセントがある場合の価格で、コンセントを新たに作る必要がある場合は、追加で電気工事費が12,000円ほどかかります。
既存トイレへの手すり設置工事
手すり | 15,000円 |
設置工事費 | 15,000円 |
合計 | 30,000円 |
※金額は税別表示
トイレのバリアフリー化のため便器横につかまり立ちする手すりを設置する工事です。バリアフリーリフォームの第一歩です。
タンク式トイレの交換工事
タンク式トイレ | 50,000円 |
取り換え工事費 | 30,000円 |
合計 | 80,000円 |
※金額は税別表示
便器本体のみを交換する場合の価格です。
20~50万円未満
トイレリフォームで最も多いのが20~50万円かけた工事です。この金額帯であれば、古くなったタンク式のトイレを最新のタンクレストイレに交換するとともに、トイレブースの内装も一新してトイレブースを丸ごとリニューアルすることも可能です。
タンクレストイレへの交換工事
タンクレストイレ | 150,000円 |
取り換え工事費 | 30,000円 |
合計 | 180,000円 |
※金額は税別表示
トイレ+内装一式交換工事
タンクレストイレ | 150,000円 |
内装・取り換え工事費 | 100,000円 |
合計 | 250,000円 |
※金額は税別表示
タンクレストイレを設置すると、トイレブース内に手洗いがないため別途手洗い器を設置することもよくあります。手洗い器の設置は追加で10万円ほどかかります。
50万円以上
和式のトイレを洋式にリフォームする場合は50万円超の費用がかかります。高齢者には和式トイレは負担なため、バリアフリーリフォームの一環として和式を洋式トイレにするリフォーム工事が行われています。
和式トイレの洋式への変更工事
トイレ・洗浄便座・紙巻き器一式 | 250,000円 |
リフォーム工事費 | 300,000円 |
合計 | 550,000円 |
※金額は税別表示
元の和式トイレに段差があった場合などは、段差部分の解体工事などが追加費用として発生します。
和式トイレのバリアフリー工事(和式から洋式への変更+手すりほか設置)
トイレ・手洗い器・手すり一式 | 450,000円 |
リフォーム工事費 | 500,000円 |
合計 | 950,000円 |
※金額は税別表示
バリアフリー化のため扉の引き戸への交換等も含んでいます。なお元の和式トイレに段差があった場合などは、段差部分の解体工事などが追加費用として発生します。
トイレリフォームの費用は便器次第?グレードによる価格の違いをチェック!
リフォーム費用は便器のグレードによっても価格が大きく変わります。住宅設備機器メーカーであるTOTO、LIXILとも種々のグレードの便器を発売しています。各グレード別の商品の特徴とおおよその価格帯を紹介していきます。
Sランク(タンクレス・全自動洗浄・暖房洗浄便座)
暖房洗浄便座が一体化したタンクレストイレで、人体感知センサーでふた・便座の開閉、洗浄を自動で行うとともに自動脱臭機能も搭載された最上位クラスの便器です。
TOTOのネオレストシリーズ、LIXILのサティスシリーズがこのクラスの商品です。
洗浄水量は1回4Lほどと節水性能も高く、月々の水道代金の節約にも貢献します。しかし価格が30万円超と高いのが玉にキズです。
Aランク(タンク付き・節水機能・脱臭機能・暖房洗浄便座)
従来型のタンク式トイレで温水洗浄便座が一体化した便器がこのクラスです。節水性能は大/小洗浄で4.8L/3.6Lと節水性能も高く、ふた・便座の自動開閉機能があるグレードも品揃えされています。脱臭機能も搭載されています。
価格は20万円台で機能と価格のバランスがいい商品群です。TOTOではGGシリーズ、LIXILではアステオがこのクラスです。
Bランク(タンク付き・暖房便座)
温水洗浄便座がセットされていない便器の基本形です。タンク式トイレで洗浄性能(節水性能)はAクラス便器と同様です。
価格は10万円弱ですが、今は温水洗浄便座を付けられるご家庭が大多数ですので、温水洗浄便座も同時に購入・設置することを考えるとAクラスと同様の価格帯になります。
脱臭機能は温水洗浄便座に組み込まれているため、温水洗浄便座を設置すると脱臭機能も付きます。TOTOのピュアレスト、LIXILのアメージュがこのクラスです。
トイレリフォーム内容で大きく変わる工事費用と工事期間
トイレリフォームは、工事内容によって工事費用と工事期間が大きく変わります。
既に洋式の水洗便器が設置されていた所で新規の便器に交換するだけなら、半日から1日で終了します。交換工事費用も3万円程度です。併せて壁紙や床の防汚パネルを交換しても1~2日で終了します。費用は便器交換と床壁更新一式(床壁の材料費を含む)で10万円程度です。
和式便器から洋式便器へのリフォームでは、排水配管や床工事も伴うため工事に数日を要します。費用は元の和式便器の段差の有無などによって大きく変わります。
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他にもまだある!便座以外にかかるトイレリフォームのオプション
トイレの便器は硬質の陶器で出来ているため、壊れることはめったにありません。トイレリフォームの動機は、長年の使用によりトイレ空間自体が汚れてきたからという場合と、高齢化に伴うバリアフリーリフォームです。
定年退職を機に自宅のリフォームをお考えになる方も多く、トイレもバリアフリーリフォームされています。トイレのバリアフリー化では手すりの設置が一般的で、部材工事費一式で3万円程度で安心安全なトイレを実現できます。
また最近は、リフォームの時にトイレの床を防汚機能のある防汚パネルを設置し、壁にも腰高までサニタリーパネルを張って清掃性を高める仕様とすることもよく行われています。
トイレはめったにリフォームする場所ではなく、一旦リフォームするとその後20年程度は使い続けます。リフォームのタイミングで改善したいポイントを明確にして、長く気持ちよく使えるトイレリフォームを行いましょう。
トイレリフォーム費用を抑えるために知っておきたいポイント
住宅のリフォームは大きな出費を伴います。費用を抑えて満足度の高いリフォームを実現するための検討ポイントを紹介します。
便器のグレードを下げる
トイレのリフォームでは、リフォーム費用総額に対し便器の価格が大きな割合を占めます。そのためリフォームの見積価格を圧縮する必要があった場合は、便器のグレードを下げるのは効果的です。
便器のグレードを下げても基本的なトイレの機能は失われませんので、無くても支障の無い機能を見極めて便器を選びましょう。
複数の業者から見積もりを出してもらう
便器の市場価格や相場はインターネット調査で分かりますが、工事費はリフォーム工事の内容によって異なるため相場感が分かりません。リフォーム工事の値ごろ感を確認するには、複数のリフォーム業者から相見積もりを取って費用と工事内容を比較することが重要です。相見積もりでは業者による工事保証期間の差も確認できて安心です。
旧型や在庫品を利用する
家電製品では、新商品が出ると旧型品は家電量販店などでは値引き率を上げて商品を売り切り、在庫を新型品に入れ替えています。
便器も同様で、メーカーは数年おきにデザインや新規機能を付加した新商品を発売しており、在庫を持つ販売店や工事店では旧型品や在庫品を安く販売することもあります。旧型品でもよければ、見積りを頼んだリフォーム業者に値引きができる商品がないか一度聞いてみましょう。
必要最低限のみのリフォーム
トイレリフォームの見積りをリフォーム業者に頼むと、便器交換に合わせてトイレットペーパーホルダー(紙巻き器)だけでなく、壁紙や床材も含めてトイレ空間を一新する見積りを作るのが一般的です。
全部を替えるとトイレ空間全体がきれいで使いやすくなりますが、コストダウンが必要な場合は交換する部材を限定するのも手です。
トイレリフォームにお金をかけるべきポイント
トイレリフォームの動機には「トイレをきれいにしたい」だけでなく「高齢者にも使いやすくしたい」といったニーズや「エコ・節水に貢献したい」というニーズがよく聞かれます。それぞれのニーズを満足させるリフォームのポイントを解説します。
老後を考えてのリフォーム
老後に備えたリフォームにもいくつかのパターンがあります。
足腰が弱ったので立ち座りしやすくするレベルであれば便器横に手すりを付け、入り口部分やトイレ内に段差があれば段差をなくすバリアフリー工事があれば安心です。
さらに車いすが必要なレベルになると、車いすでもトイレが使えるようドアを引き戸から横開きに、トイレ内空間も大きくするなどの工事が必要となります。
トイレは一度リフォームするとその後20年程度は使い続けますので、リフォームのタイミングでその後の生活を想定した対応を取っておくことが重要です。
省エネを考えてのリフォーム
東日本大震災以降、LED照明や高効率給湯器であるエコキュートやエコジョーズといったエコ設備がリフォームのタイミングで多く採用されるようになってきました。
トイレも節水性能が進化してきており、これまで20年程度使われた便器を最新式の便器に交換すると、トイレの洗浄水量を1/3程度に大きく削減できます。
また温水洗浄便座も省エネ性能が大きく向上しています。温水洗浄便座は10年程度で交換されますが、最近のものは10年前の3割近く省エネになっています。
トイレは家族全員が毎日使うものですから、リフォームのタイミングでは節水・省エネ性能の高い機種を選んだ方がお得です。
寒さ対策を考えてのリフォーム
高齢者にとって冬場に温度差のある室内は、ヒートショックに起因する各種病気を引き起こし非常に危険です。
寒いトイレも危険な場所の一つです。ヒートショック対策の一つとして暖房便座、暖房機能が標準採用された温水洗浄便座を設置することも有効です。本格的に対策するなら、トイレの床・壁・天井を断熱リフォームするのが効果的です。
国・地方自治体からの助成金や補助金でトイレリフォームがお得に!
国や地方自治体では、住宅のエコ化やバリアフリー化を推進するため、各種助成金等を出して省エネ機器や節水便器の設置、バリアフリーリフォームを後押ししています。
国が実施する全国レベルの制度と地方自治体単位での助成制度があり、国の制度には節水トイレなどのエコ設備への助成金として、過去には住宅版エコポイント制度が、2016,17年には住宅ストック循環支援事業が実施されました。地方自治体別では、バリアフリーリフォーム(高齢者対応リフォーム)やエコリフォームが実施されています。
これらの制度は定期的に改訂されますので、ご自宅のリフォームに使える助成メニューがあれば上手に利用しましょう。
どんなリフォームに使えるのか具体的な例を紹介!
今現在、トイレのリフォームに使えるメニューを紹介します。
国土交通省の調査では、1400超の自治体がバリアフリーリフォームへ助成金を出しています。助成金額は自治体によって異なりますが、トイレ内の手すりや段差解消などのリフォームに数十万円の補助をしています。
トイレの取り替え工事と比べてバリアフリー改修は費用が多額となりがちですが、助成金があれば手すりの設置等がしやすくなります。
リフォーム店など便器交換やリフォームにかかわる業者は、助成金制度等にもアンテナを張っていますので、リフォーム相談時に使える助成金メニューがないかも確認してみましょう。
税金の減額や非課税措置も一緒に活用
トイレのバリアフリーリフォームでは、所得税減税や固定資産税減税制度もあります。リフォーム工事をされる方が50歳以上、あるいは要介護又は要支援の認定を受けている方などの制限がありますが、条件に合うと所得税減税や固定資産税減税が受けられます。制度を積極的に活用し、効率的にリフォームを進めましょう。
どうやって依頼・申請するの?
バリアフリーリフォームへの助成金は、地方自治体に申請書類や工事内容を証明する書類等を提出して手続きを行います。
リフォーム工事業者が該当自治体の助成金制度や申請方法等は熟知していますので、リフォームの見積り時点で助成金申請へのサポートについても確認して業者を選定しましょう。
所得税減税に関する申請は税務署に確定申告することで受けられます。確定申告時に確定申告書に所定事項を記入し、バリアフリーリフォームに関する工事内容を証明する工事請負契約書の写しなどの必要書類を提出します。
固定資産税減税は対象者が50歳以上あるいは要介護認定等を受けているかの証明書・納税義務者の住民票の写し・リフォーム業者が発行するリフォーム工事内容証明書等の必要書類を持って市町村の窓口に申請します。
まとめ
トイレの便器は硬質の陶器で出来ているため、壊れることはめったにありません。
トイレリフォームの動機は、長年の使用によりトイレ空間自体が汚れてきたからという場合や高齢化に備えてバリアフリー工事を行う場合、あるいは住宅のエコ化の一環として節水便器に交換するといった場合などがあります。
バリアフリー化やエコ化に関しては、国・地方自治体の助成制度や減税制度もあります。リフォーム助成制度等の詳細はリフォーム店が熟知しています。
リフォーム店へのリフォーム相談、リフォーム見積りの時に助成制度の活用への支援が受けられるか確認して業者を選び、助成制度を賢く使って使いやすいリフォームを実現しましょう。